top of page
ノートブック上の2本のペン

部員日誌

諦念

鴨川のほとりをのろのろと歩いていた。腕時計の短針はすでに右の方を向いていた。でもどうしても寝ようという気にならない。暑いと有名な京都もこの時期の夜中ならまだ涼しさも感じられるだろうと、自然を感じたくてのろのろと歩いていた。普段から散歩するときはイヤホンをつけて周囲の声を遮断していた。こうすれば自分は世界から隔離されるように感じられるかもしれないと思って始めた習慣だ。自分が属する俗世界の音を聞いているのに不思議な話である。さしずめ自分の世界とやらに入るのは関の山だろう。もう何時間ほど歩いただろうか、そんなことを考える時分に体が不思議な声を感じとった。イヤホンをつけている僕には実際的に感じるはずのない外の世界の声。そうか、君は僕の世界に入りたいのか。それとも本能的に僕が受け入れようとしているのか。仲間外れはやだよって、言ってるの?川端には同じ声で目が覚めた猫が2匹。君たちだって2人だけの世界がいいだろう?誰だってそう、一人の時間を邪魔されたくはない。でも、そうか、君は僕と過ごしたいんだね。猫ちゃんたちの仲間にも入れてほしいんだね。君の熱意はよく分かった。受け入れてやる。そんなに遠くにいるのにどれだけ頑張っても近づけないなんてかわいそうだもの。だから、もう少し静かに。その声が映った鴨川の水を少し掬った。このくらいの潤滑油はあってもいいでしょ?だから、もう少し静かに、僕の声は届きそうにない。今年はもう夏がきた。だからもう、少しうるさい。猫はもう茂みに隠れた。君たちは騒音が苦手なんだな。僕も木の下に行こう。木陰は静かでいい。そして外の世界に戻ろう。時計の短針は真下に向いた。



最新記事

すべて表示
#25-08 「好きな食べ物なんですか?」

新歓の車の中、自己紹介みたいな時間に、好きな食べ物を話す流れになった。 ヨーロッパから来た留学生は、日本に来て親子丼にハマったみたいなことを言っていたし、最近ラーメンが好きになった(二郎)という人もいた。 ちなみに自分の場合、自己紹介で「好きな食べ物」の欄があったときには、...

 
 
 
#25-07 今シーズンを振り返って

今シーズンはスケートのタイム、技術の面で大きく成長することができた。  最初の試合、西宮サマーで片足B級を取った。夏の時点でB級が取れそうなところまで来ていたので、西宮サマーと全大阪でさっさと取ってしまいたかったが、結局取れたのはインカレの3000m。レース展開が自分にとっ...

 
 
 
#25-06 砂糖菓子の甘さで心は満ちる

大人になるとは、感受性が死ぬことだと思っていた。 19歳、自分を子供と呼んでも大人と呼んでも間違っている気がする、なんともいえない年齢から、もうそろそろ20歳になる。 子供の豊かな発想で、とか、柔らかい頭で、とか、そんな言葉があちこちから聞こえる中、私はそういう類の能力が壊...

 
 
 

Comentarios


月別

​最新の日誌

なお、本コーナーで取り上げてほしい件やご要望・ご意見等がございましたら、

公式LINEhttps://lin.ee/rhKDICc)公式Twitter→@KU_SpeedSkatingまたは

公式Instagram→ @kyoto_u_speedskating  からご投稿ください。

  • Line
  • X

新歓情報や試合結果など随時更新中!!

ぜひフォロー・友達追加よろしくお願いします⛸️

DMもお待ちしています

© 2023 by Key Lessons. Proudly created with Wix.com

bottom of page