諦念
- Kyoto University Speed Skating Team
- 2022年9月1日
- 読了時間: 2分
鴨川のほとりをのろのろと歩いていた。腕時計の短針はすでに右の方を向いていた。でもどうしても寝ようという気にならない。暑いと有名な京都もこの時期の夜中ならまだ涼しさも感じられるだろうと、自然を感じたくてのろのろと歩いていた。普段から散歩するときはイヤホンをつけて周囲の声を遮断していた。こうすれば自分は世界から隔離されるように感じられるかもしれないと思って始めた習慣だ。自分が属する俗世界の音を聞いているのに不思議な話である。さしずめ自分の世界とやらに入るのは関の山だろう。もう何時間ほど歩いただろうか、そんなことを考える時分に体が不思議な声を感じとった。イヤホンをつけている僕には実際的に感じるはずのない外の世界の声。そうか、君は僕の世界に入りたいのか。それとも本能的に僕が受け入れようとしているのか。仲間外れはやだよって、言ってるの?川端には同じ声で目が覚めた猫が2匹。君たちだって2人だけの世界がいいだろう?誰だってそう、一人の時間を邪魔されたくはない。でも、そうか、君は僕と過ごしたいんだね。猫ちゃんたちの仲間にも入れてほしいんだね。君の熱意はよく分かった。受け入れてやる。そんなに遠くにいるのにどれだけ頑張っても近づけないなんてかわいそうだもの。だから、もう少し静かに。その声が映った鴨川の水を少し掬った。このくらいの潤滑油はあってもいいでしょ?だから、もう少し静かに、僕の声は届きそうにない。今年はもう夏がきた。だからもう、少しうるさい。猫はもう茂みに隠れた。君たちは騒音が苦手なんだな。僕も木の下に行こう。木陰は静かでいい。そして外の世界に戻ろう。時計の短針は真下に向いた。
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