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ノートブック上の2本のペン

部員日誌

コンビニ人間

ずっと前に芥川賞を受賞したとかいうかなり有名な作品で、著者の名前が紗耶香だったので「きっとおもしろい」という希望的観測の元に人から借りてみた。夏の間バイトに勤しんだ身としてコンビニで働く主人公の描写が気になったから、ということもある。主人公はかなり「変わっている」人間で、もう少し丁寧に説明するならば猟奇的な一面がある。一般的にみて狂った感性を持っているが、コンビニでバイトするときには社会の一員になった、作中の言葉では「社会の部品になれた」という。自分の場合はどうだろう。数年来「変わってる」と言われ続けてきた。それは何かとびぬけたものがあるのか、ずれているのか、だらしないのか、、、。当然「天高生(府立天王寺高校の生徒)だから変わってる」「京大生は変わってる」と言われる類に混ぜられることもあり実際はよく分からない。確かに京大生で変わってるといわれる人は多いと思うし、とある高校の国語科の女性教員のように面白い思考の人はいた。たぶんbeとかetreとかを敢えてそのまま使って喝采を浴びるか、誤用して指摘されるかその程度の違いなんだろう。そんな私はチェーン店のカフェでバイトをしている。自分で考えて勉強をして、部活をして、そういった中高生時代を送った私にとってはマニュアル通りに動くことがいかに楽かを知り、いかに人的資本として安いかを思い知った。ただ、最も感じたのは環境によって何もかも違うことである。ヘルプで伏見まで出向いたがマニュアルを逸脱し、上司も独裁的な空気を感じる。コンビニ人間には店長に「こんな仕事でえらそうにしやがって」と歯向かうバイトが登場する。相手が独裁的になればそう考えるのもわからんではない。その感情を感じそうにはなったがおとなしくしておいた。

言われた通りにしておとなしくしておけばヒトと仲良くなれると知ったのは中学校に入ってからだった。小学校ではみんなが個性的でいい意味でみんなが浮いていた。周りが大人になったのだろうが、バイトにしても自分の存在する環境がかなり将来に影響するのだと今になって実感している。

つまるところかなり環境の良いバイトだったのだ。みんなやさしい。みんなまじめ。マニュアル通り。マニュアル以上の仕事をしていれば褒められる。バイト中だけはスターウォーズに出てくるドロイド(思考力をもったロボットの総称)のようになれて楽しかった。自分の別の一面を常に見続けていた気がした。そんな素敵なバイト先が今月いっぱいで閉店する。管理能力に非常にすぐれ(それはそれは尊敬に値するのだが!)店長は別店舗への異動を進めてくれた。ただ現実的に考えて申し出を断るしかなかった。確か川端康成だったか、恋人と別れるときには相手の家に花を植えるといい、毎年嫌でも自分のことを思い出すから、そんなエピソードを読んだことがある。恋人ほど大層なものではないが、「社会の部品」になる方法を教えてもらった場所であるし、それなりに愛着は湧いていた場所である。あと1か月で何か爪痕か何かを残して記憶にとどめたいとおもう。そんな私は今、「社会の歯車」になるか迷いながら大学に在籍している。どうしようかな、将来。きっと天命が導いてくれるのだが。

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