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ノートブック上の2本のペン

部員日誌

#23-19 夏かしい

キョロキョロと目を動かす。


あたりは真っ暗な路地で、いかにもデフォルメされた日本らしさを表す提灯が並んでいる。


情報量の多い視界のピントを合わせてみれば、普段の景色の中にいつも違う人がスマホを片手に、カメラを片手に歩いている。


別段見返すことでもない視界もリュックいっぱいに思い出を詰めていく人々にはここまで来た対価となるものらしい。


空を見上げればいつも変わらないところにこぐまの星が一匹こっちを眺めている。


かつてそいつのしっぽは旅の羅針盤だったとかいう。でもこの街で空のこぐまを見る人はいない。むしろ現代の高性能な羅針盤を見て、星の数が多いからここに人が集まっているのだ。


もう見飽きた笑顔を作る制服のおにいさんと時々目が合う。ニコリと本物の笑顔を向けてもらうことは一度もなく、ただ決まった周波数で声を掛けられる。


この街では背伸びしても良いことなんてない。


あのまちで見た景色はここよりもっと明るく、騒がしく、でもどんどん好きになる色をしていた。そこに住まう人も、そこに集った人も、みんな良い人だった。何を食べても、何を飲んでも幸せになれた。人生をも議論した。


たった一週間過ごしただけの土地も気づかぬうちに帰る場所の一つになったのかもしれない。


「またね」としゃがれた声で言われた時、私はまた来ると決めた。


みんなが記録に残す場所じゃないかもしれないけれど、記憶に残る特別な時間を過ごせたから今年一年一番印象に残った場所です。デフォルメ無しのほんとの日本、高知県土佐町。


深葉東風

 
 
 

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