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ノートブック上の2本のペン

部員日誌

#23-20 間

秋も終わりが近づいてきた日のお昼過ぎのこと、近所のスーパーから帰る途中で、道の先にボールで遊んでいる少年を見つけた。そこはおそらく彼の家の前だろう。サッカーボールでぎこちなくバスケットボールのドリブルをしていた。私は少年をちらちら見ながらその道を歩いていく。ちょうど彼の側を通り過ぎようとしたとき、ボールが私のほうへ転がってきた。少年の「すいません」と同時にボールは私の目の前を通過したが、私は何をするでもなくただすたすたと歩をすすめた。


思い返せば私も幼い頃同じように、遊んでいたボールを知らない人のところへ転がしてしまうということが何度もあった。当時の私からしたら見知らぬ大人というのは怖いもので、その程度のことでも「しまった、怒られるかもしれない」と少々怯えていた。実際大人は今日の私のように反応することなく歩いていくのだが、そんな若かりし頃の私をさっきの少年に投影してみると、転がってきたボールを無視せずに、にこっと笑顔で蹴り返しでもしてやればよかったのではないかと思い始めた。


あの大人たちは少なくとも今の私よりは大人だったと思う。彼らが何歳で、どんな仕事をしていて、どんな家族構成だったかなどは知る由もないが、転がってくるボールに対して何か感じることはあったのだろうか。いや何も思っていないか。19になったばかりの私は、買い物からの帰り道に溜まった課題や週末の予定を考えるような忙しい日々の中でも、転がってくるボールに微笑みを浮かべられるくらい余裕のある人でありたい、そんな日々を送りたい、と何となしに感じたのである。


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